診療現場からの報告

第71話:“タイミング法”でEDになった?[院長/西川]

「それまでは、子宝に恵まれなかったにせよ性交渉に何ら問題はなかったんです。
それが、奥様が不妊治療を受けるようになって以降、何故か途中で萎えたり、最初から十分な勃起が得られなかったり、といった状態が続いていて困っています。」

このような訴えで来院される方が増えています。
お伺いするに、受けられている不妊治療も様々ですが、例えば、ここでは所謂“タイミング法”について話を進めます。

婦人科医があらかじめ決めた(受精しやすい)日にセックスを行って、受精の確率を上げよう、というものですが、でもこれって、相当プレッシャーであったり、逆に大きなストレスであったりしないでしょうか。
これが原因で上記のようにEDを引き起こす可能性は十分考えられます。

ここで、細川氏が主宰するサイトへ寄せられた質問とその回答から、ひとつご紹介しておきます。

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男性不妊外来では、勃起、挿入はできるけれども、膣内で射精できないという射精障害で訪れる方が急増しているそうです。

獨協医科大学越谷病院泌尿器科の岡田教授によりますと、男性不妊外来における膣内射精障害の原因別割合は、タイミング法指導を契機とするものが約75%、 マスターベーションの方法が特殊であるとするものが約13%、性的刺激を受ける対象が特殊であるとするものが約12%と報告されています。
つまり、膣内射精障害の原因として最も多いのが、タイミング法で、夫婦生活の日を決めらることによる、精神的なプレッシャーによるものということです。

ご相談内容を拝見しますと、お一人目のお子さんを妊娠されたのも、指定された日にしか夫婦生活がなかったとのこと。それまでは、問題なかったようですから、原因はタイミング指導を契機とするものである可能性が高いのではないでしょうか。その証拠に、義務ではなく、欲求にまかせたときはうまくいったとのこと。
元々、排卵しづらいとのことですから、排卵のタイミングが把握しづらく、また、周期が長くなるほど排卵の機会も少なくなるわけですから、医師から指定された日はとても貴重であることはよく理解できます。
ですから、どちらが悪いというわけでは決してなく、貴重な機会を大切にされるのも当然でしょうし、ご主人も、その事を承知されているがゆえに、また、奥さんを思うお気持ちがお強いからこそ、精神的に過度のプレッシャーがかかったことは容易に想像できます。
お互いによかれと思って、頑張れば頑張るほど辛い思いをするという、悪循環な状態だったと言えるかもしれません。
真面目で、責任感が強く、奥さん思いの男性ほどそうなりやすいそうです。
ただし、タイミング指導が契機になって膣内射精障害のなってしまったケースは、本当によくあることで、かつ、ほとんどの場合解決すると言われています。
そのために、パートナーの理解と協力が必要です。
まずは、タイミング法を正しく理解することです。
タイミング法とは、“その日だけ”仲良くするということではなく、“その日も”仲良くするということです。
つまり、夫婦生活とは、お互いの愛情を確かめるために、お互いの欲求の高まりにまかせて仲良くするということであって、決して、義務的に行うものではないということです。
そもそもタイミングにこだわっても、妊娠率はそれほど高くならないとの報告もあります。
ですから、この際、タイミング法はやめてしまって、お互いの欲求にまかせてみてはいかがでしょうか?
タイミングを合わせたから授かるのではなく、お互いの欲求が高まって、仲良くした結果、授かるものです。

これまでは、ちょっと、タイミング法の副作用にかかってしまったということですね。

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セックスって、やりたい、したい時にするもので、子供を授かるためだけに義務的に行うものではないはずで(結果的にはそうであっても)、もっと動物的であってもよさそうだし(ヒトとしての理性は当然必要ですが)、もっとリラックスしたものであるべきだと思います。