診療現場からの報告

第28話:“インポテンス”という言葉 [院長/西川]

勃起に障害のある状態のことを、我が国では長らく“インポテンス”と呼んできました。正確には、「性交時、有効な勃起が得られない、そのために75%以上の確率で性交渉が行えない状態」の事を、インポテンスと定義してきました。

ところが1993年、米国国立保健研究所(NIH)が、この“インポテンス”という言葉が多分に侮蔑的な意味合いを持つとの理由で、以降はこの“インポテンス”という言葉に代わって勃起障害(Erectile Dysfunction=ED)という用語を使用するよう勧告しています。

その甲斐あってか、今ではEDという用語はかなり一般的になってきているようです。

1993年にシルデナフィル(バイアグラ)が発売されて以降、EDの治療法は一変したと言っても過言ではありません。従来は、勃起障害の原因を調べるために幾種類かの検査を行い、主に漢方薬を主体とした内服治療が行われていました。ただ残念ながら、このような治療によって患者さんの満足度はどうであったかというと、恐らくは惨憺たるものであったと思われます。

現在では、シルデナフィル、バルデナフィル(レビトラ)の投与によって、その有効性は90%以上とも言われていますし、以前とは比較にならないほどの効果を上げています。 ただ、これらの治療薬がある意味よく効くのもあって、胡散臭い業者が多い、偽者薬が横行しているのも事実です。また、すべてのEDが、これらの薬の適応であるはずもありません。

勃起障害は決して珍しい病態ではなく、日本では1130万人の方がこのEDで悩まれていると推定されています。恥ずかしがる事なく、また医師の診察を邪魔くさがることなく、専門の施設を受診される事を強くお勧めします。