診療現場からの報告

第3話:植毛の手術方法による長所・短所  [院長/西川]

髪の毛が薄くなる、というのはまぎれもない老化現象のひとつです。つまり、髪の毛が薄いと老けて見えるのは当たり前の事で、そのため、年齢に比して髪の毛が薄いとなるとそれが悩みの種となるのは当然の事と思われます。

‘若はげ’の最大の原因は遺伝であり、確かに毛髪遺伝子は優性遺伝ですが、近年、明らかに若はげが増えている事の説明がつきません。

現在では皮脂腺学説(つまり体表へ油分を分泌する皮脂腺の肥大化による)が主流となりつつあります。戦後の食生活の大きな変化(脂質分等の多量摂取)によるもので、体格、体型等と同じく、髪の毛も西洋化してきたといえます。
ある意味、食生活をふくめた環境の変化によるDNAの変化なのでしょうが。

植毛手術には大きく分けて、御自身の毛を移植する方法と人工の毛を植え付ける方法があります。
前者の自毛移植(単一生毛植毛などとよく言われますが)は、主に後頭部から採取した毛(禿げにくい性格の)を薄い部分(大抵が生え際や頭頂部ですが)に移植する方法です。1本ずつ(正確には1〜3本ずつ)植え付けるので自然に見えますし、何より御自身の毛ですので抜けても生えてきます。ただ、元来の密度には一度で戻す事はできませんし、植毛した毛が生えそろうのに半年以上かかります。また、毛だけでなく毛の再生中枢を含めた一つのユニットでの移植ですので、術後の赤み等が1週間程度目立つ事になります。

後者の人工毛植毛は、人工的につくられた毛(太さや色で十数種類準備されています)を頭皮に打ち込んでいく方法です。どのような密度にも、また、どのような髪型でもつくる事は可能ですし、すぐに仕上がると言う大きなメリットがあります。 ただ、頭皮に人工物が入る訳ですから、異物反応は避けれません。そのために、一定期間で抜け落ちる事になります。

いずれも長所と短所がありますし、当然受診者の方の希望もありますから、手術適応は慎重に決めなければなりません。